2001年の秋、私は「ホームルーム」と名付けた小さなテレビ番組制作事務所を開きました。
その社名から、「不動産関係かな?」とか「教育関連の仕事ですか?」などと言われながらも、
ドキュメンタリー系を中心とした番組制作を続けています。
この間、テレビというメディアをめぐる状況は厳しさを増し「The King Of media」の時代の終焉が 云々され始めています。たしかに民放各社の売り上げ低下、視聴率の伸び悩み、iPhoneなどデジタル通信系の急進など悲観的要素ばかりが増え、民放もNHKも制作費の切り下げを行い 、私たち制作プロダクションは小さくなったパイの分配を巡って、苛烈な競争を強いられています。
しかし、本当にテレビは衰退期にはいったのでしょうか。私はそうは思いません。
テレビはようやく成長期から成熟期を迎えようとしているのです。
こどもの時代から大人の時代への転換期にあるのだと思います。
メディアとしての先輩である、映画が良い先例を示しています。
産業としての映画は、火の車の状態が続いていても、映画そのものは無くならないどころか、
魅力的なメディアとして、人々の関心を集め、大作から小品まで、幅広い人々の参加が可能になってきています。
どうやらテレビも、本格的に量から質の時代へ向かっているようです。
一口に、質といっても、その内容は多様です。多様だからなお、質が求められるのだと思います。量の競争が、不毛であるということは、企業間の競争でも視聴率競争でも明らかです。
それに対し、質の競争は苦しいけれど、楽しいこともあるので、そのための拠点として立ち上げた事務所をホームルームと名付けたのです。
そこが、「ホームランド」や「ホームタウン」のように、「心開かれる協働の場」であってほしいと。